1.はじめに。

こんにちは。ラッキーの保護者 です。

最近はあまり取沙汰されませんが、'90年頃から 2000年代中盤にかけて、「世界最速」の座を争う、いわゆる「メガスポーツ」と呼ばれる新たなジャンルのバイクが持て囃されました。その先駆けとなったのが '90年に登場した「カワサキZZR1100」で、国産各メーカー(ヤマハ を除く)はそれに追い付き、追い越すべく熾烈な開発競争を繰り広げたのでした。

そこで今回は、それらメガスポーツの数々をご紹介しながら、最高速競争に於ける時代背景及び新規技術の変遷を辿ってみたいと思います。

2.メガスポーツの変遷。

(1)カワサキZZR1100(写真は 2代目の "D型" です)

最高速競争の発端となった記念すべきマシン。
'90年に登場したこのモデルは、GPZ900R ニンジャの流れを汲む水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 1,052cc 147馬力のエンジンをアルミシートをプレス形成したメイン部分に鋳造製のステアリングヘッド&スイングアームピボット及びリアのエンジンマウント部を組み合わせたアルミ・ペリメーターフレームに搭載しています。
同クラスの市販車として初めてラムエアインテークを採用し、最高速付近ではカタログデータより約 5~10% ほど高い出力を発生して、実測 290km/h 前後の最高速度を発揮しました。
その後、’93年には大幅なモディファイが施された 2代目に移行、並み居るライバル(同社の ZXー12R も含む)の登場を経てもその人気は衰えず、2001年まで生産が継続されました。

画像: Photo from http://www.mr-bike.jp/feature/zzr/1100-2.html

Photo from http://www.mr-bike.jp/feature/zzr/1100-2.html

(2)ホンダCBR1100XX スーパーブラックバード

世界最速の座を奪取するべくホンダが意地となって開発した CBRシリーズ のフラッグシップです。
'96年に登場したこのモデルは、新設計の水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 1,137cc 164馬力のエンジンを 5角形 目の字断面のアルミ・ツインチューブフレームに搭載しています。
さらに空力を徹底的に追求したフルカウルボディに上下 2段式ヘッドライトを採用、DーCBS(Dual Combined Brake System)と呼ばれる前後連動ブレーキを標準装備しています。
ZZR1100よりも高速性能に優れてはいましたが、最高速度は実測で 300km/h に僅かに届きませんでした。
その後 '99年にはマイナーチェンジして2代目に移行、吸気にダイレクトエアインテーク(いわゆるラムエアシステム)とフューエルインジェクション(PGMーFI)を採用。
更に 2001年には欧州での排出ガス規制に合わせて排気ガス浄化装置を追加、最大出力が 152馬力にデチューンされた 3代目となり、2007年まで生産されました。

画像: Photo from http://www.motorcyclespecs.co.za/model/Honda/honda_cbr1100xx%2000.htm

Photo from http://www.motorcyclespecs.co.za/model/Honda/honda_cbr1100xx%2000.htm

(3)スズキGSX1300R ハヤブサ

カワサキとホンダの競争を傍観していたスズキが満を持して送り出した同社のフラッグシップです。
'99年に登場したこのモデルは、水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 1,299cc 175馬力のエンジンを GSXーR1000 のそれを踏襲したアルミ・ツインスパーフレームに搭載していました。
初期モデルはスピードメーターの目盛が 350km/h まで刻まれ、量産市販車最速であった ホンダCBR1100XXスーパーブラックバード が持つ最高速度 約 300km/h を大幅に超える 312km/h の性能を発揮し、20世紀最速の市販バイクとなりました。
その完成度は非常に高く、基本的な部分に変更を加えることなく長らく生産されましたが、2007年に 2代目に移行、ストロークアップをして 1,340cc 197馬力に出力向上すると共に、SDTV (Suzuki Dual Throttle Valve)や ツイン・フューエルインジェクター、チタン製の吸・排気バルブ、SーDMS(Suzuki Drive Mode Selector=出力特性を 3段階から選択可能なシステム)を新たに導入、2014年には日本国内でも正式に発売されて現在に至ります。

画像: Photo from https://bike-lineage.org/suzuki/gsx1300r/gsx1300r.html

Photo from https://bike-lineage.org/suzuki/gsx1300r/gsx1300r.html

(4)カワサキ・ニンジャ ZXー12R

スズキGSX1300R ハヤブサ から世界最速の座を取り戻すべく開発された究極のマシンです。
2000年に登場したこのモデルは、新開発の水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ 1,199cc 181馬力(ラムエア作動時は190馬力)のエンジンをメインパイプ内にエアクリーナーをレイアウトするアルミ・バックボーンフレームに搭載、実測で 320km/h 以上を発揮しました。
しかし超高速域での性能を追求するがあまり、初期型はやや扱いが難しいエンジンや神経質なハンドリングなど、扱いやすいと評されたライバルの ハヤブサ とは対照的にライダーに高度なテクニックを要求しました。
そのため 2002年型ではエンジンや外装、足回り、ギア比などを中心に大幅なモディファイが施され、2001年に欧州市場で始まった 300km/h 自主規制のため スピードリミッターが装備されました。
カワサキが威信をかけて開発したこの車両、スペック的には狙った目的を達成したものの、その過激な性能とイメージにより商業的に成功したとは言えず、2006年をもって生産終了となりました。

画像: Photo from https://www.reliable-store.com/products/kawasaki-zx12r-zx1200-2000-2006-repair-service-manual-pdf

Photo from https://www.reliable-store.com/products/kawasaki-zx12r-zx1200-2000-2006-repair-service-manual-pdf

3.最後に!

'90年に登場した ZZR1100 の大ヒットにより盛り上がった最高速競争でしたが、そのあまりの過熱ぶりを憂慮して欧州で実施された自主規制により、最高速度を 300km/h に抑えるスピードリミッターの装備とスピードメーターの目盛自粛(上限を300km/h までに抑え、かつ 300km/h は表示しない)がされるに伴い人気に陰りが出ました。
そのため、ホンダは スーパーブラックバード の後継車種を投入せず、カワサキは直接の後継車種ではないがツーリングやタンデムなどにも耐えうる ZZRシリーズ を復活させた ZZR1400(北米・オセアニア向けは "ZXー14R" )にフラッグシップの座を譲り、スズキのみが 2代目となった ハヤブサ を現在も継続生産しています。
その良し悪しはさておき、ひとつの時代が終焉を迎えたのでした。

以上、駆け足的にメガスポーツによる「最高速競争」の変遷をご説明いたしました。またまた長文となりましたが、最後までお読みいただき、有難うございました。

(※上記の説明の多くに関しては、"Wikipedia" を参考とさせていただきました。)

This article is a sponsored article by
''.