強烈な記憶

私は中古車流通業界を中心に複数の会社を渡り歩いてまいりましたものですから、たくさんのクルマに触れて来ました。古くは1992年当時に新卒で入社したCモータース。当時はフィアットやプジョー、ローバーの新車ディーラーを軸に、様々な中古欧州車の販売を行なっていましたね-。アメリカでレストアしたヒストリックカーの輸入販売や、新車の並行輸入車も取り扱っていました。ミニ・モークやリプロダクションしたミニ・マーコス、ウェストフィールドやMVSヴェンチュリなんて、新車で取り扱えたんですから幸せな職場でした。

当時の思い出として、一番強烈に記憶に残っているクルマは??って、よく聞かれます。
決まってこう答えます。
「フィアット リトモ 130TC!!」
なんでだろ??なんでかな???いつも考えるんですけど、僕、このクルマを一度たりとも「綺麗に動かせた試しがない」んです。やられっぱなしです。重いステアリングとクラッチに対して、ビンビン回るキャブのアバルトエンジン。自分はドライビングポジションがどうしても馴染まず、それに加えて信じられない振れ幅の「個体差」があったりするもんですから、なんかいつもギクシャクさせてばかりいましたっけ。。どうしてもリトモアバルトを綺麗に動かすリズムがとれなかったんですよね。
野暮な言い方をすれば「乗りにくかった」なんですが、そこは生粋のクルマ好き。ましてや様々な乗りにくいクルマを華麗に乗り分けるってのがキワモノ系クルマ屋のモチベーションでしたから「130TCの真髄を味わいきれなかった」という未達成感として、圧倒的に記憶に残っているわけです。じゃじゃ馬を涼しい顔して乗りこなすってのは、クルマ好きの美学ですもんね。。あれから25年。リベンジできるもんならしてみたいですけど、さすがに出会えないかなぁ。。出会えてもコッチが日和っちゃってるから克服できる自信はないですねぇ。。先日のあいちトリコローレに素晴らしいコンディションの130TC出展されてたな・・(写真はその個体です)・・見なかったことにしよう。

画像: 強烈な記憶

自分にとってのいいクルマ

さて、更にその当時の記憶を振り返りますと、最も自分と馴染んだクルマってのがありまして、学生時代から30歳になるまでの間に、実に3台も所有した、自分的名車が存在します。
「Autobianchi A112 Junior」です。

画像: 自分にとってのいいクルマ

Cモータース時代、A112Jr.で通勤していました。当時はブラック企業なんて言葉もありませんでしたし、むしろ自分がブラック社員で、店閉めてから藤沢までクルマの入替えに出かけたり、整備の手伝いしたり、帰る時間は大概深夜でした。会社に求められたんでなく、好んでやってましたね。だからブラック社員。とにかくイケイケドンドンそんな毎日で、帰る頃には心底ヘトヘトだったんですね。
仕事が終わると、交通量の少なくなった深夜の目白通りの脇で、愛機A112の暖気運転をしながら気が遠くなってるわけです。やがて「さ、帰ぇるべ」と号令をかけ走り出すんですが、そんな状態からA112Jr.を動かしていると、練馬から江戸川までの35kmの道のりで、次第に疲れを忘れ、いつの間にか運転を楽しんでいるんです。これが本当に不思議で、私にとってのこのクルマの最大の価値でした。疲れきった私から、上手に元気を引き出してくれるクルマだったんですね!A112Jr.は。これがアバルトだったら、多分、暖機運転の段階で「ごめんなさい。今日は君の求めるリズムで運転できそうにないや・・・」と言ってクルマに負けちゃってたと思うんです。しかし、900ccの42馬力は、私の周波数とぴったり合った動きをしてくれて、毎日毎日、疲れきった私を、極々自然に楽しい気分へといざなってくれる魔法のクルマだったんです。名車A112ABARTHの影に隠れてしまいがちなJuniorではありましたが、私にとっては名車中の名車。まさしく愛車として、私の人生を傍で支えてくれたクルマなんです。
クルマの発する周波数と自分の周波数がピッタリ合って、クルマと自分が一つのリズムを求め合う。
自分にとってのいいクルマっていうことなんだなって思います。

クルマのリズムと自分のリズム

こうやって考えると、名車って必ずしも絶対的な評価によるものだけではないですよね。私は、クルマを運転操作する時に生じる「固有のリズム」がキーだと思ってんです。クルマのリズムが自分に合うかどうか??ってことですね。
微妙に科学的に申しますと、ステアリング操作には重さや質感、それによって生じるクルマの反応があります。アクセルワークにも操作感と、エンジンの反応があります。ブレーキにも、クラッチにも、シフトにも、それぞれ感触と反応があって、これらの操作を1人の人間が行います。すると、どうしたってあらゆる操作を連続的に不規則に、臨機応変直感的に行うわけですから、個々のクルマには、快適に動くリズムと言うものが生じ、ドライバーはそのリズムを上手く操るという作業を行っているわけです。ゆったりとしたリズムのクルマは、運転する私を癒やしてくれたりします。ルノーカングーやシトロエンクサラピカソなんて、私が癒やされちゃうリズムを放ってますね。大好きです。方や、絶妙にアップテンポなリズムで綺麗に動くクルマもあります。A112Juniorもそうでしたが、イタリアンピッコロクラスには名車が揃っていますよね!楽しくなっちゃうリズムで動くクルマ達。
特にFIAT PANDA2なんて、「癒やし」と「楽し」のリズムがかなり高次元でバランスしてます。どっちも味わえちゃいます。これって凄い事なんです!ワタシ的ベストフィアットです!この魅力はまたいつか超大作を書きますのでお待ち下さい。。

画像1: クルマのリズムと自分のリズム
画像2: クルマのリズムと自分のリズム

こんな論点でクルマを見つめると、歴史に残る事実としての名車以外にも、実に様々な「自分にとっての名車」が発掘されると思います。もちろん理にも叶っています。なぜなら「固有のリズムを発信するクルマであること」が前提となるからです。例えば、ステアリング良し!スロットル良し!しかしなぜブレーキが軽くてオーバーサーボ????みたいなクルマは、魅力的なリズムを奏でていないのでリスト落ちになります。ですから、魅力的なリズムを生むクルマ=統制の取れた操作感を持つ良い車と言えるわけです。

画像3: クルマのリズムと自分のリズム

例えば、全く期待も何もせずに乗ったダイハツ ミラジーノ。イタリア車の楽しさやフランス車の癒やしがあったわけではありませんが、実に統制がとれていました。軽自動車ですから上限を100km/h+αの世界に割り切って、その範囲の中でドライバーが慌てずに安心して操作できる操作感とリズム感で巧みに統制されていました。リズムバランスを崩さない様なチューニングが成されていることが伝わるんですね。日本車らしい控えめな音色を奏でますが、きちっとしたリズムを持っています。之即ち私的名車也。

その意味で申しますと、リズムのとれなかった130TCが私の思い出の一台になっているのはですね、まさしく「アバルトマジック」です。なぜなら、非アバルト系のリトモは僕にはまるっきりダメなクルマでしたもの。。リズムが合わないヤツでした。。。アバルトのエンジン載ってると、どうしてもちゃんと操りたくなるのですよね。。。きっと、130TCには私のレベルでは奏でられないリズムが宿ってると思うんです。だってアバルトですもん!それを知りたいという欲求が強烈に起こったんですよね。。ああ知ってみたい130TCの真髄を。。不協和音の先にあるアバルトマジックを。。。

好きなリズムを見つけましょう!

閑話休題。。。
このように、クルマをリズムで捉えると、視点が変わってとても面白いと思います。
そこに「自分に合ったリズムのクルマ」って観点も加わると、殊更面白いです。
何故かと言うと、人生のこの瞬間に求めているリズムが、癒やしなのか、アップテンポなものなのかって、人それぞれ変化しますよね。元気が欲しい時期や、癒やしがほしい時期が繰り返したりします。更には、人生の経験によって、リズムを味わう幅も広がったりします。ですから、一期一会ってわけじゃないんですけど、その瞬間の自分が欲するリズムを持ったクルマに出会えるか否か?!という要素が生じるから面白い。
例えば、ランチア テーマってクルマ、私が25~26歳の頃、たくさん販売しました。丁度マツダ系某ディーラーが取り扱っていた時代にですね、新古車が結構な数流通したんですよ。でも、当時は「イタリアのクラウンだなこりゃ・・・」と言って、実は真価が分かっていませんでした。ランチア テーマが奏でる高尚なリズムを味わう心が、若い私には備わってなかったんだと思います。
しかし!20年の時を経て味わうランチア テーマは、中年の心を捉えて離さない、絶妙なリズムを刻む名車中の名車だった事に気付いたわけです。

画像: 好きなリズムを見つけましょう!

このクルマ、綺麗に動かすには、ちょっとした「心の余白」が必要で、ステアリングを切るにも、スロットルを開けるにも、スムースに停止するにも、一拍置くというか、半拍待つみたいな所作を心得ると、とたんに優雅に振る舞いますし、そんな余裕を持った操作をしていると、本家とは違うアルファロメオV6の鼓動が慎ましやかに心に響き始めるのです。
「このリズムはあの頃の自分にゃ味わえなかったなぁ・・・」などと妙に納得してしまう次第ではございますが、中年+ランチアという魅力に気づいた今、ランチアムーザを粋に乗りこなすオトコになりたいと心底思ってみたり。。。あー楽しい。
ちなみに、こういう「所作」に通ずる運転操作を求めるリズムのあるクルマって、ハイドロシトロエンとか、ジャガーXJシリーズとか色々あって、その奥深さを語り始めると、更に超大作になるので今回はやめておきます・・・が、しかし、このような観点でクルマを語らう事が実に楽しく、同調してくださるお仲間がいらっしゃれば嬉しいですね。
それと、クルマ選びに絶対はありませんが「今この瞬間に自分が欲するリズムを持ったクルマ」と出会えている方って結構いらっしゃいます。不思議なもんです。導かれてるとしか思えないですね。
私の職業はクルマ売りですが、ハードの構成や動力性能を語るのはいささか疲れちゃいましたね。実は皆さんそんな情報なんて求めてないですからね。そうではなくて「あなたが欲するリズムを奏でるクルマはこれです!」と言って、おクルマをレコメンデーション出来るオトコになりたいもんです。
さて、長くなりましたが、このような観点で、今後クルマのこと、COVOで綴らせていただきますね!リズムの合う方だけ、ご覧頂ければ本望です。宜しくお願い致します♪

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